いや、衝撃だった。何てポップな死の本か。
筆者はイラストレーターらしい。世界中の色んな死後の世界だの、有名人の生き様死に様など、どれもこれも、明るくポップなイラスト付きである、わけなんだが、しかし、案外(失礼)真摯に向き合っているなあ、と。
一番衝撃だったのは、色んな宗教の死後の世界、死んだらどうなる、の話なんだが、鳥葬でも人食でもない。ジプシーは、誰かが死ぬと、「居なかったことにする」。つまり、「最初からそんな人はいなかったことにする」。墓がないのは当然として、埋葬が終わったら、供養どころか、遺品も残さない、死者の思い出話すらしない、最初からそんな人はいなかったんだから、と、忘れる。いや、忘れる以上だな。最初から居ないんだから。世界で一番厳しい死である、と、筆者は書いていた。心からそう思う。
これって、谷山浩子氏の「アトカタモナイノ国」の世界だなあ、と。つきあっていた筈の恋人が居なくなる。だけではなく、誰に尋ねても、そんなヒトは知らないと言われ、毎日書いていた日記
の中からも恋人
に関する記述が消え、電話番号も無くなり、うろ覚えで恋人の家まで歩いてみたら、代わりにあったのは三階建ての古い郵便局で、・・・・という内容。
自分も流浪の民である。そうなりたい。
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寄藤 文平
大和書房
¥ 1,575
(2005-12-15)
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