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中村 桃子
岩波書店
¥ 840
(2012-08-22)
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日本語は複雑だと言われる中で、役割語てか、性別で使う用語だのが変わるって問題がある。てよだわコトバなんかはもう流石に死語だけど、日本人の知らない日本語にあったように、「おっきい」は女性語だし「でかい」は男性語だし。
じゃ、これは昔からそうかといったら全然違う。江戸時代の出版物にある、娘達の話し言葉は、まるっきり、男だ。おれ、だの、しやがる、だのはごく普通。まあ、階級や場の問題もあるけどさ。
じゃ、一体、女言葉はどこからというと、女房語である。女房語は宮中のコトバ。おしゃもじ、とか、かもじとか、いしいしとか。これが、江戸の大奥に移籍される。大奥に勤める女性達は、武家出身だけじゃなくて、民間から養女という形で美女で才女が採用されてたもんだから、そのコトバが上流の商家に、そして上品な話し方として認識されていくわけだ。そして、明治維新。女子教育の場で、完全に統一される。そして教科書で決定的に規定される。男子は ボク。女子は ワタシ。
そりゃ、小説とか書く時には便利だと思うけど、外国人には気の毒だなあと思う。つまり、ニホンジンにとっては、幾通りもの話し方を使えて初めて社会的な話者になりうるってこと。敬語、仲間語、方言、年齢、時代、性別、職業、そういった色々を、場によって使い分ける能力。ちょっとアスペル気味だった幼少期のわしには、そりゃ苦痛だった筈だわな。