以前、「狐笛の彼方に」で駄音を作って知人に強制的に聴かせていたりしたのだが、これで作って、と返された。何か、梁塵秘抄みたいなタイトルやなあ、と思いつつ。
主人公は、源氏一派の16歳、草十郎。ただし、妾腹で、誰も居ないところで笛を吹くのが好きな少年。平治の乱に、兵として坂東から出て来るも、惨敗。後の頼朝を救う為に、残党狩りの野武士の中に一人取り残されたのだが、その腕を買われて救われる。さらし首にされている主君を見て、納得する為に、首領と京に上るのだが、そこで出会ったのが、鎮魂の舞を舞う、遊君の少女、糸世。
笛の才能と、舞の才能が、合わさって、異世界の扉を開き、未来を変える、というのが、何か判る。入ってしまえば、光が見えて、というのも、よく判る。しかし、その挙げ句に、糸世は向こう側に行ってしまう。
登場人物はこの二人だけでなく、もう一人、鳥の王である烏の鳥彦王。こいつがまた、やたら良い感じだ。ニンゲンの発想が判らないから、知りたい、という。鳥は、誰かを失うことがあったら、すぐに、忘れるか忘れないかを決める。忘れると決めたら、本当に忘れる。だが、忘れないと決めたら長くは生きない。数日の間に死んでしまう。だが、ニンゲンは、忘れないのに死なない。それは、泣く、という事をするからだ。
烏の目で物事を見ると、案外、すっきり見られる気がする。
最後に。
でも、その、糸世のカミカクシの正体のオチは、何とかならんか。