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安村 敏信
小学館
¥ 2,940
(2008-08)
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江戸の絵師といえば、尾形光琳とか円山応挙とかっくらいしか知らなかった。しかも、日本史受験対策のための丸暗記で、絵と名前は一致していない。
これをぶちかましてくれたのが、河鍋暁斎。たまたま見に行った妖怪画展覧会で、もう、かっつーん!である。伊藤若沖は、新江ノ島水族館が決定打だった。それ以前にも、博物学の荒俣氏の本に幾つかは出ていたんだが。
その後、ちょっと美術系な方と知り合って、横山大観の展覧会に行ったりしーのして、美学とか堅苦しく考える方が損だ、と、やっと悟った。
で。
そうやって見ていったら、島に赴任時代に何のこっちゃ?しか認識していなかった英一蝶とか、この本を読んで初めて、あ、ごっつおもろいおっさんやん、と、判った。流罪になって、江戸を思い出して書いた作品はすんごい丁寧だ。だいたい、流罪の原因だって、例の犬将軍の皮肉を遠回しに言っていただけだってのに。更に、この一蝶、俳句は詠むわ、絵師と幇間の二足のわらじだわ、相当、おもろいおっさんっぽい。
それから
長沢蘆雪。虎ってよりは、猫だし。でも動きが凄いし。
葛飾応為。例の、北斎の娘だが、北斎よりもすんっっごい、光を意識した絵を残している。感覚は現代のモノと言ってもいいと思う。
それから、それぞれの絵師の生活。ほんと、文化人全てと関わってるような位置だったっぽい。武士なんだけど絵師、とかもいる中で、特にすんげえのが、姫路の藩主酒井の弟って絵師。
それから、面白かったのが、暁斎のエピソード。物乞いに銭を無心されたんだが、銭はやらずに、絵を描いてやった。みんなが極楽に行けるんで、地獄の役人は極楽の役所に異動準備してるわ、鬼は極楽の飯炊きになるべく準備をしてるわ、という絵。これを元に、講釈していったら、大いに評価されて、大儲け、元物乞いは、立派に家まで建てて、暁斎に礼を言いに行った、という話。ありがちな話だ。できすぎな気もするが、ああ、あいつならな、と思わせる辺りが何とも言えない。