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ナンシー クレス
早川書房
¥ 945
(2009-03-31)
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相変わらず、短編しか読めない中途半端なSF者なわしだった。
これも実はいろんな受賞作。
遺伝子操作で生まれてきた、眠らない子供達。知能が高く、病気もしない。しかし、それ故に孤立したり、迫害されたりする。自分達の方が優れているのに。
主人公は、大富豪の娘。手違いで、二卵性双生児の妹が居る。彼女は、普通のコドモ。故に、妹は苦しみ続け、家を出る。一方、彼女は同じ境遇の若者達とネットワークを作る。一般人達は、彼らに羨望を抱き、法的に差別しようとする。親から虐待されるコドモすら居る。しかし、彼らの才能は、明らかに人類全体に恩恵をもたらすものである。主人公は、日本人天才技術者の思想から、理性的に、与える発想で生きていく。一方、虐待を受けて育った青年は、自分たちだけの閉鎖都市を造り、そこだけで完結するシステムを作ろうとする。
ベガーズ・イン・スペインってのは、スペインの物乞いという意味だ。もしも、君がスペインに行って、物乞いにせびられたらどうするか。一人なら、恵んでやれるだろう。二人でも大丈夫だ。でも、町中の物乞いが、押し寄せたら?君自身の財産全てが無くなったら?それでも、物乞い達は言うだろう。何で俺たちには恵んでくれないんだ。そして、不満をもち、君に害意を持つだろう。それでも君は、恵んでやるべきだと思うのか?
・・・・これって、SFの名を借りた、フツーの社会ドラマである気がする。別に遺伝し改良の新人種でなくても、格差社会って、つまりこういうことなんじゃね?きっと。
そして、この短編のラストは、あんな結果で、そして続編になる短編では、眠らない犬についてのエピソードが語られる。
でもって、どれもこれも、後味が悪い。うええ。なのに、読ませる。うええ。